研究概要

はじめに

  • 当研究室の研究テーマについて考えたときに、近年話題になっているごみ処理問題が思い起こされます。

    現代文明は物を作ることに一所懸命であり、
    物をいかに廃棄するか、限られた資源をいかに有効にリサイクルするか、
    という問題に対して、うまく対処してきたとはとてもいえません。
    それらの問題に対して有効な解決法を見出さなければ、
    我々の社会システムがいずれ破綻するとの警告がなされています。

    システムとしての細胞が安定に存在するための条件は、
    その内部に有効なリサイクリング機能を備えていることにあると思います。
    仮に物の合成一本槍だった場合、システムとして硬直化することは想像に難くありません。
    合成と分解を適宜調整することで様々な状況に柔軟に対応することが可能になると考えられます。

    我々は、細胞のリサイクリング機能、オートファジーの研究をしています。

オートファジーとは

  • 真核細胞はリソソーム/液胞と呼ばれる一重膜で囲まれたコンパートメントを備えています。
    リソソーム/液胞は、その内部に様々な加水分解酵素(プロテアーゼ等)が局在し、
    分解コンパートメントとして機能しています。

    オートファジー(自食作用)とは、自らの細胞質成分/オルガネラを、
    リソソーム/液胞に送り込み分解する現象です


    例えば、栄養欠乏状態になったときに、オートファジーは誘導されますが、自分自身を一部分解することで、

    1、その分解産物を栄養源として利用する
    2、貧環境下で生き残るために細胞活動の活性を下げる
    3、貧環境下に対応した性質に自らを再構築する

    といった生理的な意義が想定されています。

    オートファジーは真核生物で広く保存されており、細胞内のホメオスタシスを維持する基本的な機能として、飢餓条件のみならず基底レベルでも常に機能していると考えられています。

    また、増加した小胞体やペルオキシソーム等のオルガネラを分解することで、
    これらのオルガネラの量的調節に関与しています。

    その他、細胞分化、細胞死での役割が議論されていますが、
    それらとの関係は、未だそれほど明らかになっていません。

オートファジーの進行過程

  • オートファジーは大規模な細胞内膜の運動のもとに進行します。

1.オートファゴソームの形成

  • 細胞内膜がカップ型の中間構造を経て、細胞質成分/オルガネラを取り囲み、
    オートファゴソームと呼ばれる、二重(あるいは多重)の膜構造体が形成されます。

2.エンドソーム、リソソーム/液胞との融合

  • オートファゴソームの外膜が、エンドソームまたはリソソーム/液胞膜と融合します。
      

3.オートファゴソームの内膜構造の分解

  • 酵母細胞の場合オートファゴソームの内膜構造(オートファジックボディ)が液胞内に送り込まれます。
    オートファジックボディは液胞内のプロテアーゼ活性に依存して分解されます。
      

4.細胞質成分の分解

  • 細胞質成分はリソソーム/液胞内の加水分解酵素(プロテアーゼ等)により分解されます。
      

  • study3a

オートファジーにおける問題点

  • 我々は以下のような問題に興味があります。

    1.オートファジーの誘導機構
    2.オートファゴソームの形成機構(オートファゴソーム膜の由来)
    3.オートファジーと他のリソソーム/液胞輸送経路との関係
    4.オートファジックボディーの分解機構
    5.多細胞生物におけるオートファジーの生理学的意義

これまでの当研究室の研究アプローチ

実験材料

  • 出芽酵母

研究手法

  • 分子遺伝学的手法----オートファジー関連変異株の単離及びその原因遺伝子のクローニング、
                遺伝学的に相互作用する遺伝子のスクリーニング、
                既知遺伝子変異株のオートファジー表現型の解析、
                ホモログ遺伝子のクローニング、
                オートファジー不能動植物の作製、

  • 分子生物学的手法----Two-hybrid法による物理学的相互作用する分子のスクリーニング、
                遺伝子発現調節機構の解析、
                機能ドメインの探索

  • 生化学的解析--------オートファジー関連分子の性質の生化学的解析
                (特異的抗体の作製、エピトープタギング)、
                オルガネラの分画、単離

  • 形態学的解析--------光学顕微鏡観察、
                免疫蛍光法、
                GFP融合蛋白質による分子動態の観察、
                電子顕微鏡観察(凍結置換法、免疫電顕法)

  • 生理学的解析--------オートファジーアッセイ法の確立、
                オートファジー誘導条件、
                阻害条件の探索、
                オートファジー関連変異株の表現型解析

  • これらのアプローチにより、オートファジーの細胞生物学的 及び 生理学的な理解を目指しています。

おわりに

  • より詳しい研究内容については原著論文 及び 総説をごらんください。




  • T.Noda

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